議会報告ASSEMBLY REPORT
2015.10.27 カテゴリ:平成27年9月定例会 代表質問答弁
○三十九番(小泉米造)(登壇) 議長のお許しを得ましたので、自民党奈良を代表いたしまして、私、小泉米造が県政の諸課題について質問を行います。
質問に入ります前に、先日の関東・東北豪雨による大雨では茨城県常総市において鬼怒川の堤防が決壊し、大規模な浸水被害が発生するなど、東北地方や関東地方の各地で大規模な災害が発生いたしました。亡くなられた方々のご冥福を慎んでお祈りをし、被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧、生活再建をお祈り申し上げます。
それでは、質問に入ります。
初めに、災害に強い奈良県を実現するための取り組みについてお伺いをいたします。
奈良県においても、昭和五十七年に大きな水害が発生した大和川流域を抱えることから、鬼怒川の堤防決壊はまさに対岸の火事ではありません。大和川流域では、流域に占める山地面積の割合が少ない上に、昭和四十年以降の急激な都市化の進展に伴い、保水力が低下したことや、流域内の河川が全て大和川一本に合流し、亀の瀬狭窄部に集中することから、昭和五十七年八月の豪雨により、王寺町をはじめ、一万戸以上が浸水する洪水被害が発生し、また、それ以降も浸水被害がたびたび発生をいたしております。
このような状況を踏まえ、県は、国、流域市町村とともに、河川改修等を行う治水対策と、流域の保水機能を積極的に確保する流域対策とをあわせた大和川流域総合治水対策に取り組んでおられるところですが、いまだに対策は道半ばと聞いております。昭和五十七年のような降雨やこのたびの関東・東北豪雨のような大雨であっても、県民の安全・安心が確保できるよう、着実な事業の進捗を望むものであります。そこで、大和川流域総合治水対策の取り組みについて、これまでの状況と今後の方針を改めて知事にお伺いをいたします。
一方で、このたびの豪雨による水害では、行政の住民に対する避難指示が一部で発令されないなど、避難システムが十分機能しなかったのではないかとの報道もありました。今後に向けての課題ではないかと考えております。豪雨災害の発生を完全に防止することは困難ではありますが、日ごろの備えや避難の徹底を図ることにより、被害を最小限にとどめることは可能であります。そのための対策として、市町村によって的確な避難勧告等の情報が地域住民に伝えられることはもちろんですが、これを受けた住民が適切に避難行動をとることが大切であります。このためには、県民の皆様がみずからの命はみずからで守る自助の意識を高めていただくことが重要と考えております。
そこで、知事にお伺いをいたします。
豪雨災害から県民の命を守り、被害を最小限に抑えるために、県は市町村や県民に対してどのような取り組みを行っていこうとされているのか、お尋ねをしておきます。
次に、奈良公園の魅力向上に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
平成二十六年十一月、国においては、人口減少克服、地方創生の実現に向け、まち・ひと・しごと創生法が制定され、同年十二月には、今後、取り組むべき将来の方向性を提示する長期ビジョンと、二〇一五年度を初年度とする今後五カ年の政策目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめた総合戦略が策定されました。
本県においても、県政の重要施策への取り組みと国の施策推進の動きをうまくマッチングさせるため、奈良県地方創生本部を昨年八月に設置をし、少子化・女性、産業・しごと・観光・農林、国土強靱化・まちづくり・景観彩り、健康長寿・地域医療ビジョン・障害者、文化・スポーツ・教育の五つの部会・分野で取り組みを進めてこられました。
そして、現在、県では、●「住んで良し」「働いて良し」「訪れて良し」●の三点を基本目標として、魅力あふれる奈良県を築くため、奈良県地方創生総合戦略の策定に取り組んでおられるところであります。
その基本目標の一つである「訪れて良し」を実現していくためには、やはり観光振興が不可欠であります。そのために、知事は、奈良観光の起点であり、奈良のゲートウェイに位置する大宮通りを、観光客をお迎えした奈良県の姿勢を表現する大変重要なメインストリートとして捉えられ、その通りをよくする取り組みである大宮通りプロジェクトを推進されておられます。そのプロジェクトの主要施策の一つであるプール跡地へのホテル誘致につきましては、昨年十二月にホテル事業の建設・運営に関する優先交渉権者が決まり、一定のめどが立ってきたと感じております。
そこで、次は奈良公園であります。
奈良公園は、大宮通りの終着点に位置し、古都奈良の文化財として世界遺産に登録された春日大社や興福寺、東大寺などの貴重な歴史文化資源と、春日山原始林をはじめとする自然資源とが見事に調和した、他に類のない特別な公園でございます。また、最近は、外国人観光客が大幅に増加するなど、以前にも増してますます国際色が豊かになり、世界から注目される国際観光拠点になってきています。このような奈良公園を積極的に維持し、利活用していくために、県は平成二十四年二月に奈良公園基本戦略を策定し、現在、その戦略に基づき整備を進められています。
そして、先日、八月七日に奈良公園地区整備検討委員会が開催されました。その内容を拝見しますと、先ほどの大宮通りプロジェクトに位置づけされている(仮称)登大路ターミナルの内容がございました。このターミナルにつきましては、奈良公園周辺の渋滞緩和に寄与するとともに、先ほど申し上げましたように、奈良公園に来ていただいた観光客をお迎えするという、しっかりとしたおもてなしが大変重要でございます。そのことがリピーターを育むことにつながり、ひいては奈良県の観光振興につながり、さらには地方創生につながっていくことになると思います。
そこで、登大路ターミナルについて、どのように整備を進めていこうとされているのか、知事のお考えをお伺いをいたしたいと思います。
次に、若草山の移動支援についての内容がございました。
若草山の移動支援については、今までいろいろ議論が交わされてまいりました。知事がおっしゃるツーリズム・フォー・オール、つまり、障害者や高齢者などの交通弱者を含む全ての人の旅の実現という考え方は私も全く同感であります。ぜひ、実現すべきことであると考えます。しかしながら、若草山は三笠の山の雪として南都八景の一つに数えられるなど、奈良公園の著名な眺望景観を構成する重要な要素であり、この普遍的価値との両立がこの問題を難しくしていると思われます。先日の整備検討委員会では、構造物の整備を要しないソフト整備による移動支援として、今ある奈良奥山ドライブウエーにぐるっとバスを走らせることを検討していくことを県が提案されたと聞いております。このことについては、今後、しっかり検討いただきたいと思いますが、その前提として若草山のにぎわいづくりについての県の考え方を明らかにする必要があると思います。
そこで、この若草山のにぎわいづくりについて、どのように考えているのか、知事にお尋ねをしておきます。
次に、高畑町裁判所跡地の整備についての内容がございました。
高畑町というところは閑静な住宅地であり、周りには新薬師寺や国指定重要文化財の頭塔石仏、国登録有形文化財である志賀直哉旧居などがあります。また、隣接して飛火野園地や浮見堂が浮かぶ鷺池があり、観光地として非常にポテンシャルの高い地域であります。
その一方で、この裁判所跡地は、裁判所としての土地利用がなされなくなって以来、未利用地となっており、平成十七年に県が古都買い入れ地として買収してからも未利用地のまま管理も不十分な状況であり、あのまま放っておくことは大変もったいないことであると思っておりました。今回の議会において、この裁判所跡地における整備を進めるための計画策定などに要する補正予算案が提案されていますが、今後、この土地をどのように活用しようと考えているのか、知事にお尋ねをしておきます。
次に、リニア中央新幹線についてお伺いします。
リニア中央新幹線の最近の動きとして、JR東海は、東京・名古屋間において、環境影響評価の手続を経て、昨年十月に国土交通大臣から工事実施計画の認可を受けて、十二月から工事に着工しております。また、これを受けて沿線自治体では、ルートの中心線の測量や用地取得に向けた地元説明会が行われていると聞いております。
このように東京・名古屋間では二〇二七年の開業に向け、リニア中央新幹線の建設が着々と進んでおりますが、その一方で、名古屋・大阪間については、環境影響評価、その手続すらなされていません。国の基本計画や整備計画では、主要な経過地として奈良市付近と決定されていますが、名古屋以西のルートについては、国の審議会では二十キロ幅の範囲が示されているのみで、より詳細な駅の場所やルートは明らかにされていないのが現状であります。
この憂慮すべき現状を打ち破るために、ことし七月に、県内の三十三の市町村と奈良県議会の議員十五人で構成する『「奈良県にリニアを!」の会』が開催されました。この会議には、私を含め、市町村長や市町村議会の議長など約七十人の関係者が出席をし、リニア中央新幹線の効果を地域の発展に最大限生かすため、次の三つの提言を行いました。
一つ目は、リニア中央新幹線がもたらす効果が最大限に発揮され、広く全国に行き渡るよう、ルートを早期に確定し、東京・大阪間を全線同時開業すべきこと。また、そのための具体策を早急に検討し、方策を示すこと。
二つ目は、リニア中央新幹線のルートは災害に強い国土づくりといった観点から、現在の東海道新幹線とできる限り離して、国の整備計画どおり、奈良市付近を経過地とする三重・奈良ルートとして、日本の大動脈を二重化すべきこと。
三つ目は、中間駅の位置が早期に決定されるよう県内の候補地を一本化すべきこと。中間駅は、リニア中央新幹線がもたらす効果が県南部を含む奈良県全体に、さらには紀伊半島全体に及ぶよう、鉄道網・道路網で各地との高い交通結節性を有し、県の人口重心にも近接した大和郡山市に設置すべきことの三点を提言書として取りまとめられました。この提言書については、『「奈良県にリニアを!」の会』の世話人をされておられます市長、町長が先月、知事のところにお伺いをしてお渡しされたと聞いているところでございます。
そこで、知事にお伺いをいたします。
これらの提言のうち、リニア中央新幹線の駅やルートの早期確定のためには、やはり私は、まず、その前提となる名古屋・大阪間の環境影響評価を一刻も早く行っていただきたいと考えております。名古屋・大阪間の環境影響評価の実現について、JR東海はどのような考えを持っておられるのでしょうか。また、名古屋・大阪間の環境影響評価の早期実現に向け、今後、県としてはどのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いいたしたいと思います。
さらに、仮に名古屋以西において、JR東海が環境影響評価に着手しなくとも、駅位置の早期確定のためには、県内の駅の候補地を一つに絞って、県全体で一丸となって要望活動を行っていくことが必要であると考えますが、あわせて、知事のご所見をお伺いをいたします。
『「奈良県にリニアを!」の会』では、三重・奈良ルートの早期実現に一緒に取り組んでいる三重県亀山市の担当部長から、官民一体となったリニア中央新幹線誘致の取り組みについて説明をいただきましたが、その説明の中で、リニア中央新幹線によって地域にもたらされる効果を最大限に高めるには、車両基地を誘致することも重要であるとのアドバイスをいただきました。
私も、車両基地の誘致については、県内雇用の増加や従業員の定住化、関連企業の立地など、経済波及効果が期待できることに加え、三重・奈良ルートを確定する際の重要な要素にもなると考えています。
そこで、今後、本県がリニア中央新幹線の建設促進の取り組みを行っていく際には、新たに車両基地の誘致を要望項目として掲げ、積極的に要望活動を行ってはどうかと考えますが、知事のお考えをお伺いしたいと思います。
最後に、大坂までの全線同時開業を実現するための取り組みについてですが、一部の民間団体からのアイデアとして、リニア中央新幹線の建設主体として国から指名されたJR東海とは別に、リニア中央新幹線を建設するための特定目的会社を立ち上げ、建設資金を集めて、その特定目的会社を主体としてリニア中央新幹線の建設を進めてはどうかという声もありますが、そのような動きに対しての知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
次に、近鉄郡山駅周辺地区のまちづくりについてお伺いをいたします。
昨年の六月議会の代表質問において、大和郡山市中心市街地のまちづくりに必要な道路整備について質問をいたした際に、私の方から、JR郡山駅から近鉄郡山駅までの区間、通称矢田町通りについては、自動車交通を遮断して、歩行者専用道路とし、町なかを自由に回遊できる快適な歩行者空間の整備を行うことにより、まちに活気があふれ、にぎわいを呼び込むことができるのではないかという、大胆な提言をさせていただきました。この質問に対して知事からも、さまざまな機能が集積する大和郡山市の中心市街地では、高齢者、来訪者など誰もが、徒歩やバスで移動しやすく回遊性の高い環境と、人々が集い、にぎわう環境を整えることが重要である。また、自動車を極力排除し、歩行者や小型バスが回遊できる計画、いわゆる中心市街地区域の歩車分離の考えをお示ししていただきました。さらに、近鉄郡山駅周辺では、駅の移設も前提に、新たな駅前づくりを検討してもよいのではないかと考えているという答弁をいただき、夢を膨らませてきたところでございます。
このような状況の中、人々が集いにぎわう環境整備、公共・公益施設の再配置、安心・安全で快適に移動できる環境整備をまちづくりの検討の方向として、県と大和郡山市は、平成二十六年十一月十九日にまちづくりに関する包括協定を締結され、その検討対象地区として近鉄郡山駅周辺地区について、協働・連携して、まちづくり基本構想づくりを進められておられます。
大和郡山市では、本年六月に市庁舎建設推進特別委員会を市議会に設置されて、老朽化した市庁舎の整備を検討されることを表明されました。この市庁舎についても、まちづくりを検討する範囲に含まれていることから、公有地の有効的な活用という観点から、一体的に検討すべきと私は考えております。また、バスターミナルの改修工事に着手されるなど、駅周辺ではまちづくりの兆しが見えてきました。
庁舎の建てかえといえば、以前知事がよくお話しされていた東京の豊島区の事例がございます。この豊島区では、旧庁舎用地を貸し出すことで得た資金を利用し、民間が建設した複合ビルの一部に移転するなど、民間支援をうまく活用され、区財政の負担を抑えて整備されたと聞いています。東京という土地柄でこそなせる資金計画かもしれませんけれども、このような例を参考にできるのではないかと考えています。
また先日、知事のお話を聞く機会があり、その場で知事は、近鉄郡山駅を北側に移設した上で、線路を越える高架道路、現駅舎跡地の利活用、踏切の廃止など、近鉄郡山駅周辺地区のまちづくりにかけるご自身の思いをお述べになるとともに、駅整備に対する費用負担についてもご自身のお考えを示されました。このような魅力あるまちづくりには、さきの知事のお考えのように近鉄郡山駅をどのようにしていくのかが、一番の鍵を握ることになると思います。
新奈良県総合医療センターの玄関口にもなる現在の近鉄郡山駅は、バリアフリー化が十分ではなく、また、構内踏切が残るなど、安全性にも課題があると思います。先日、知事が話されたとおり、私もこの機会に、安全でにぎわいのある拠点となるような駅を整備するとともに、新しい駅施設だけでなく、既存の商店街も快適に利用できるような駅前づくりが必要だと考えております。
そこで、知事にお尋ねをいたします。
近鉄郡山駅周辺地区のまちづくりについて、具体的にどのような将来像を描こうとしているのか、この将来像の実現に向け、どのように進めていこうと考えているのか、お聞かせください。
次に、地域医療構想の策定についてお伺いをいたします。
現在、日本は世界に類を見ない少子高齢化が進んでいます。既に、六十五歳以上の高齢者人口は総人口の四分の一となり、今後も、いわゆる団塊の世代が全て七十五歳以上の後期高齢者となる二〇二五年に向けて高齢化は進んでいくと予想されています。奈良県においても、人口が減少に転じている中で、高齢化率は平成二十一年度以降全国平均を上回っており、今後も全国より速いスピードで高齢化が進んでいく見込みとなっています。
国民にとって長寿は長年の願いであり、戦後の日本の生活水準の目覚ましい向上によりこれを実現しました。これに大きく寄与したのが社会保障制度の充実でございます。国民に広く医療保険や介護保険が行き渡り、適切な医療や介護が受けられることで、我が国は世界一の長寿の国となりました。
しかし、社会保障制度の充実による成功は、必然的に高齢化を招き、年金、医療、介護などの社会保障給付は既に年間百兆円を超える水準となっています。また、少子高齢化は、医療従事者などの確保にも影響を及ぼしています。今後、働く世代の人口が減少していく社会において、人的資源の供給にも限界があると考えられます。これらのことから、社会保障制度自体の持続可能性が問われることとなり、社会保障制度の根幹を維持していくためには、社会保障制度の改革が喫緊の課題となっております。
こうしたことから、国においては、地域における医療・介護の総合的な確保を図る改革を推進しておられますが、医療や介護をできる限り住みなれた地域で継続して受けることができるよう、地域における適正な医療や介護サービスを提供する体制を実現し、患者が早期に社会復帰することを目指しています。
そのような中で、政府は二〇二五年の必要病床数、いわゆる入院ベッド数についての推計を発表しました。これによると、東京、大阪といった大都市部などの六つの都府県では、今後、高齢者人口の増加により病床は不足する一方で、それ以外の四十一道府県では最大で三五%も過剰になるという厳しい内容となっています。全国の合計数では、最大二十万床削減されるといった内容になっております。奈良県においても、全国と比較すれば、過剰となる規模が比較的少ないとはいえ、入院ベッド数が千二百床程度の削減との報道もあり、県内の医療関係者の方が将来の展望を心配する内容になっています。
また、将来、介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療などで追加的に対応する患者についても全国で三十万人程度と推計されており、地域で支える医療提供体制の整備が急務であることを示しています。
そこで、知事にお伺いをいたします。
二〇二五年の必要病床数が全国で最大二十万床削減されるという国の推計結果もありますが、県では、今年度策定に取り組んでおられる地域医療構想において、高齢化の実情に応じた適正な医療提供体制の構築をどのように進めようとされているのでしょうか。
次に、スイス・ベルン州との友好提携における林業分野の取り組みについてお伺いをいたします。
近年、木材価格の低迷や、世代交代による森林所有者の山に対する関心の薄れなどにより、森林の手入れや管理が行われなくなり、その結果、森林が本来有する、土砂災害防止や水源涵養などの公益的機能が十分発揮できていない森林が増加している傾向にあります。その対策として、本県では平成十八年度より、森林環境税を導入し、同税を活用した放置森林の整備に取り組んでいます。
さらに、平成二十二年度からは、奈良県森林づくり並びに林業及び木材産業振興条例に基づき、森林のゾーニングを行い、木材生産を目的とした森林施業が持続的に行われる森林を木材生産林、それ以外の管理放棄、放置された人工林や里山林、及び生物多様性に重視した森林を環境保全林と位置づけ、その環境保全林を対象に整備に取り組んでいることは承知しております。
しかしながら、放置森林は、依然多く存在し、将来的にも何か別の手だても検討すべき時期に来ているのではないかと考えております。
そんな折、ことしの四月十七日に本県とスイス・ベルン州との間で友好提携が締結されました。その中で、ベルン州の首相から、特に林業の分野における交流に早速取りかかりたいとのコメントをいただいたと聞いております。
これを受け、直後の六月には、スイスからフォレスターと呼ばれる森林管理者をお招きし、県職員や林業関係者を対象に、現地での実施研修や講演が行われたことが新聞の記事として取り上げられていました。その記事の中で特に興味深かった内容といたしましては、お招きしたフォレスターの方が、日本の山はスイスとよく似ているとお話しをされた上で、多様な樹種と樹齢がまじる森にすることで災害にも強くなり、経営と環境保全が両立できることを強調されたことであります。
また、最近の話題といたしまして、石破地方創生担当大臣が、林業の盛んなオーストリアを訪問し、木材の伐採現場などを視察の上、日本の林業を再生し、山村を活性化し、活力を取り戻したいとコメントをされていました。
本県におきましても、南部・東部地域の振興は重要な課題であり、そのためには林業の振興や、適切な森林管理は、避けて通ることのできない課題であると考えています。
そこで、知事にお伺いをいたします。
スイス・ベルン州との友好提携における林業分野の取り組みを通して、本県の林業や森林管理をどのように進めていこうとお考えでしょうか、お尋ねをしておきます。
最後に、子どもの安全・安心の確保について警察本部長と教育長にお伺いをいたします。
皆様も既にご承知のとおり、本年七月四日、香芝市内の商業施設のトイレ、小学生女児が連れ去られ、監禁される事件が発生しました。本県警察の素早い捜査により、翌七月五日には幸い女児を無事保護するとともに、犯人の逮捕に至っており、胸をなでおろしたところでございます。
ただ、この事件は休日の白昼、多数の人が集まる商業施設での犯行ということで、町なかの死角を改めて認識させられました。
また、隣接する大阪府の寝屋川市では、八月十二日の深夜から外出したまま行方不明となっていた中学生の男女二名が殺害され、ご遺体が発見されるという最悪の結果となった事件が発生しました。この事件は国民を震撼させ、テレビや新聞で毎日のように報道され、犯人に対する憤りと不安が一層高まっています。
現在、この事件は捜査中でありますが、被害者の無念とご家族の方々の胸中ははかり知れないものがあり、被害者のご冥福を心よりお祈りいたしますとともに、ご家族の皆様が一日も早く平穏な生活を取り戻されますことを切に願うところであります。そして、改めてこのような事件を未然に防止するために官民一体となった取り組みの必要性を感じているところであります。
本県では、平成十六年に奈良市富雄において、学校から帰宅途中の小学生女児が連れ去られ、殺害される事件が発生し、これを契機として地域住民が推進する防犯ボランティアによる見守り活動が活発になっています。
しかしながら、こうした子どもが被害者となる凶悪事件は、依然として、全国各地で散見されています。
先ほど申し上げましたように香芝市内の事件や寝屋川市での事件では、街頭に設置された防犯カメラが事件解決に大きな役割を果たしたと報道されており、自治体や自治会等で防犯カメラの設置に向けた取り組みが一層加速しています。
香芝市の事件や寝屋川市の事件、さらには各地で発生している子どもの安全を脅かす事案を防ぐためには、警察による警戒活動の強化や地域住民、自治体による子どもの見守り活動のさらなる強化が求められているところであり、加えて、こうした犯罪を起こさせない環境づくりと、万が一、事件が発生した際の被害者の早期保護などのためにも、防犯カメラの設置などの対策が必要であると考えます。
そこで、警察本部長にお伺いをいたします。
子どもの安全・安心の確保に向け、警察として、どのように考え、どのように取り組んでおられるのでしょうか。また、地域住民や自治体が行う防犯活動に対して、どのような支援をされているのでしょうか、お伺いをいたします。
また、寝屋川市の事件で私が特に懸念することがあります。それは防犯カメラに、深夜まちを徘回する子どもたちの姿が写っていたことです。日本は世界で最も安全な国の一つといった話をよく耳にいたしますが、深夜に未成年が外出すれば、事故や事件に巻き込まれる可能性が高まるといったことは、誰もが理解していることであると思います。なぜ、子どもだけで深夜にまちを徘回していたのか、恐らく世間の多くの方が、私と同じような思いを持っておられるのではないでしょうか。
今後、再びこのような痛ましい事件が起こることのないよう、事件をしっかり検証し、何が原因であったのか、未然に防止するためには、どのような取り組みが必要なのかを、社会全体で考えることが大切であると思っています。
そこで、教育長にお尋ねをいたします。
子どもたちが、このような事件や事故に巻き込まれないために、安全に関する子どもへの指導、保護者への啓発や家庭でのしつけ等について、学校でどのような取り組みをされているのかをお伺いをいたします。
以上で、壇上からの質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(中村昭) 荒井知事。
○知事(荒井正吾)(登壇) 三十九番小泉議員のご質問がございました。
まず、第一問は、大和川の昭和五十七年の大水害を念頭の置き、関東・東北豪雨のことを念頭に置き、水害対策の取り組みについてのご質問でございます。
関東・東北豪雨のような規模の豪雨が大和川を直撃いたしますと、大和川は必ず決壊するように思います。鬼怒川の決壊を眼前にして、大和川に対する危機感を募らせているところでございます。
大和川流域では、昭和五十七年の大水害を契機に、水害対策を実行してまいりました。国・県・流域市町村が連携して、流域全体で水害に強いまちづくりを進めようというために、大和川流域総合治水対策協議会を組織して、河川改修などによる流す対策を中心に、また、ため池の治水利用等によるためる対策をあわせて実施する総合治水対策に取り組んできたわけでございます。
このうち、ためる対策につきましては、大和川にはダムの建設はできませんので、ため池ということでございますが、県・市町村ごとに目標量を設定して取り組んできておりますが、このようなため池の治水量につきましては、目標を達成した市町村がある一方、ほとんど実施されていない市町村もあるなど、支川の上流の市町村が多いわけでございますが、その取り組みにばらつきがある状況でございます。進捗率も、全体として平成二十六年度末で目標量の三八%とおくれた状態にございます。
また、大和川流域におきましては、大水害から三十年以上経過して、当初想定していなかった新たな課題も顕著になってきております。
例を挙げますと、一つには防災調整池を必要としない小規模開発がの増加してきたことでございます。二つ目は、ため池の減少による保水力の低下が大和平野、大和川流域に見られることでございます。三つ目は、浸水区域における住宅等の建設が多くなってきていることでございます。このようなことから、直轄遊水地の事業が具体的に動き出したここ数年の時期を契機として、県におきましても、内水対策を完璧なものにすることに積極的に取り組むとともに、新たな課題の解決に向けて、総合治水対策を推進するための条例を定めさせていただきたいと考えております。
治水、森林、農業、土地利用、まちづくりなどの幅広い分野の学識者や流域市町村の代表者からなる奈良県総合治水対策推進委員会を設置して、条例に盛り込むべき内容についてご議論をいただくこととさせていただきたいと思っております。これまでの課題の発見に際しまして、委員会の検討項目といたしましては、防災調整池の設置対象となる開発範囲を拡大する、規制を拡大するということ、あるいは水田貯留の促進をする、あるいはため池を保全する仕組みを構築する、浸水区域における土地利用規制をする、県及び上下流の市町村が連携して、まちづくりと一体となって総合治水対策に取り組む仕組みを構築するなどが考えられます。それらについて、委員会でより深く議論をいただきたいと考えております。
また、あわせまして、大和川流域総合治水対策協議会におきましても、流域市町村と調整を図っていく予定でございますが、これらの進捗状況につきましても、逐次、県議会へも報告をさせていただきたいと存じます。
同じく、災害の取り組みについて、県民の命をどう守るのか、被害を最小化するのにどうするのかというソフトに関する質問がございました。
このたびの関東・東北豪雨では、市町村が迅速な避難勧告などの発令や避難所の開設など、的確な防災対策を実施する重要性を再確認、再認識させていただいたところでございますが、避難につきましては市町村の役目が大変大きい分野でございます。
本県では、昨年度から、より充実した防災対策を進めるため、防災計画の見直しを進める市町村を支援しています。特に、人命に直結する避難勧告などの発令基準などにつきましては、専門的知識を持った気象台や河川事務所など、国の機関の協力を得て、具体的な基準の策定や運用マニュアルづくりを進めているところでございます。
大和川流域におきましては、現在、水害時の避難勧告などの発令基準が必要な規模の大きな河川を流れる二十九市町村の全てが発令基準を有しておりますが、そのうち二十四市町村は河川水位など具体的な数値に基づく基準を想定済みでございますが、本年度中には残る市町村でも策定できるように、客観的な基準を策定できるように取り組んでまいりたいと思います。
また、大規模な浸水被害が発生する場合を想定し、流域市町村間で避難勧告等の判断に不整合が生じないように、上流と下流で避難勧告をした市町村と、しない市町村などが生じないように、大和川流域総合治水対策協議会や防災計画見直しブロック会議の場を通じて、避難勧告などの整合性について調整を図っていきたいと思います。
さらに、県内市町村長の災害対応能力の向上を図るため、災害発生時の市町村長の記者会見を模擬的に行うことなどを内容とする専門研修、トップフォーラムin奈良を十一月下旬に開催する予定としております。
一方、議員お述べのとおり、私も、住民が自分の命は自分で守る自助は非常に重要であると考えておりますが、このため、県では、広く県民の方々に自助の意識を持っていただくため、過去に起こった災害の状況や災害に対する備えの必要性を、講演会や県民だよりなど、さまざまな手段を活用して情報発信し、啓発を図っております。また、昨年度には、大和川の水害を想定した県民参加型の防災総合訓練を斑鳩町で実施をいたしました。
加えまして、地域での取り組み、共助を促進するために、自主防災組織の研修へのアドバイザー派遣、防災リーダーの養成、避難所開設運営訓練への支援などを行っているところでございます。
このように、自助、共助の取り組みに対する支援などを強化するとともに、国・県・市町村が実施する公助の主体間での連携を進めることも必要でございます。地域防災力の向上を図り、災害に日本一強い奈良県づくりを目指してまいりたいと思っております。
次は、奈良公園の魅力向上に向けた取り組みについて三問のご質問がございました。
第一のご質問は、県庁の横にあります登大路ターミナルの整備についてのご質問でございます。
(仮称)登大路ターミナルは、観光客をお迎えするという強い姿勢を奈良県が表現する場としております大宮通りプロジェクトの中で重要な拠点として位置づけられているところでございます。登大路周辺の交通渋滞の緩和と、そこを拠点に周りを周遊していただく環境の向上を図る機能を有する施設として、整備計画を進めているところでございます。
さらに、このターミナルは奈良公園の玄関口に位置しております。多くの来訪者をお迎えする施設となることから、来訪者の方々に満足いただける奈良公園とするため、十分な利便性と快適性を提供する機能が必要があると考えております。そのため、修学旅行生や外国人観光客をはじめとする来訪者に、より興味深く、奥深い奈良の魅力を学び、感じていただけるような展示室や三百人規模のレクチャーホールを整備し、奈良の歴史や文化をわかりやすく学んでいただけるようにしようとしているところでございます。
また、展望のよい休息スペースやカフェなどの飲食物販スペースを整備することによりまして、歩いて奈良公園を周遊される来訪者の方々にも疲れを癒やしていただけるサービスを提供できる施設にする計画でございます。
このような世界に誇れる奈良公園の玄関口の施設として、利便性のあるおもてなしをしっかり感じていただける登大路ターミナルの整備は、平成三十年の供用を目途に進めているところでございます。
奈良公園に関する二つ目のご質問でございますが、若草山のにぎわいづくりについてのご質問でございます。
若草山は、奈良公園のランドマークとして観光客に親しまれているとともに、手軽な登山コースとして、また、奈良公園や東大寺の鴟尾をはじめとする、奈良盆地全体の風景を一望できる絶好の眺望スポットとして人気のあるところでございます。その眺望を高齢者や障害者を含む全ての人々に楽しんでいただきたいという思いから、若草山への移動支援について検討を進めてきたところでございます。
また一方、若草山のふもとまでのアクセスをよくするための施策でございますが、ぐるっとバスを若草山のまで運行しておりますが、それとともに若草山山ろくの環境整備としいたしましてトイレの建てかえ、道路の改修、歩道の整備もこれまで重畳に進めているところでございます。
さらに、若草山の広々とした雄大な空間は、さまざまなイベント開催の場としても適地でございます。伝統行事であります山焼きに加えまして、最近ではコンサートやトレイルラン、奈良ウェディングなどの新しいイベントも開催される場になってきております。
また、若草山は世界遺産である春日山原始林の入り口に当たりますので、遊歩道や案内板を整備するとともに、案内ガイドも配置して、原始林の魅力を体感していただくツアーを企画するなど、新しいソフト形の取り組みも始めました。このような取り組みを通じまして、若草山周辺地域が魅力あふれる歴史・自然ゾーンとして、一層にぎわう地域となるよう努めていきたいと思います。
三点目の奈良公園関連のご質問でございますが、高畑町裁判所跡地の今後の展望についてのご質問でございます。
高畑町裁判所跡地は県有地でございますが、議員お述べのように、未利用地であるものの観光地として非常にポテンシャルが高い場所にございます。奈良公園基本戦略の中に位置づけ、整備方針について検討してきたものでございます。
この場所は、室町時代には興福寺の子院であります松林院がございました。また、大正時代には大阪の財閥でありました山口家の南都別荘があったところであるようでございます。現在も大正時代の作庭と見られる庭園が存在をしております。
平成二十六年度に文化財発掘調査と庭園遺構調査を実施いたしました。中世の遺構が残っていたことや近代の庭園遺構が良好な形で残っていることが確認されました。このようなことから県では、この場所の整備に際しましては、現存する遺構を生かした庭園整備を行うことで、これらの価値を継承し、世界に誇れる庭園文化を感じることができる整備を基本的な考え方にしたいと思っております。また、跡地利用の方向性について、そのような方向での検討を進めております。
具体的には、貴重な歴史文化遺産であります中世の遺構や庭園遺構の積極的な保存整備を県みずからが行うとともに、歴史文化と自然が融合する静ひつな環境を維持しつつ、歴史文化や文化を感じる都市公園として必要な上質なサービスを提供する宿泊・交流・料理飲食施設の整備も図りたいと考えております。
なお、宿泊・交流・料理飲食施設は、都市公園の便益施設として民間による整備を想定しておりまして、計画策定費とあわせて、事業者の公募選定に向けた費用を、今回、今議会の補正予算案に計上しているところでございます。
次のご質問は、リニア中央新幹線についてのご質問が二つございました。
まず、リニア中央新幹線の位置、ルートや駅位置の確定の進め方についてでございます。
リニア中央新幹線のルートや駅位置につきましては、建設主体であるJR東海が行う環境影響評価の手続の中で明らかにされるものと理解されております。東京・名古屋間につきましても、平成二十三年に計画段階環境配慮書で概略のルートと駅位置が示されましたが、その後、平成二十五年の環境影響評価準備書で詳細なルートと駅位置が示されたものでございます。このようなことから、名古屋・大阪間の名古屋以西のルートにつきましては、奈良市付近駅の早期確定に向けまして、一日も早い環境影響評価手続の着手が必要と考えているところでございます。平成二十三年以来、繰り返し機会を捉え、国やJR東海に対し、強くこのことを働きかけてまいりました。
本年六月に東京で開催されました沿線都府県で構成するリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の総会におきましても、決議・要望事項に取り上げていただきましたが、出席されていたJR東海の柘植社長からは、挨拶の中で民間企業としては健全経営と安全、安定配当が第一で、環境影響評価の先行は難しいとの発言がございました。このように、環境影響評価の早期着手につきましては前途多難と言わざるを得ないわけでございますが、本県といたしましては、想定されるルートの土地利用状況や将来の整備効果につきまして独自の調査を進めるなど、協力体制や受け入れ体制の準備を進めてきております。それとともに、三重県や両県の経済団体とも連携しながら引き続き、国やJR東海に対して、一日も早く環境影響評価の手続に着手するよう、力強く働きかけてまいりたいと考えております。
また、リニア中央新幹線の奈良市付近の駅の位置につきましては、JR東海が実施する環境影響評価の手続の過程で、超電導リニア中央新幹線の技術的な制約、地形・地質あるいは土地利用や文化財といった立地環境の制約によって、ルートとともにおのずと絞り込まれてくるものであるように思います。
また逆に、環境影響評価が進まないと、駅の位置の確定は難しいものとされております。したがいまして、駅位置の早期確定に向けましては、こちらから候補地を一カ所に絞り込んでお願いするのではなく、環境影響評価手続に一日も早く着手することによって確定していただけるよう、県全体で一丸となって、粘り強く継続的に要望活動を行っていくことが何よりも重要であると考えているところでございます。
リニア中央新幹線につきまして、車両基地についての積極的な要望活動を行ってはどうかというご質問がございました。
リニア中央新幹線の車両基地は、東京・名古屋間におきましては、ターミナルとなる品川駅、名古屋駅の近傍である神奈川県相模原市と岐阜県中津川市に計画されています。東京・名古屋間では二カ所に車両基地がつくられる計画でございます。したがいまして、大阪のターミナル駅の近傍であります奈良県内に車両基地ができてもおかしくはないと考えております。相模原市、中津川市で計画されている車両基地の規模でございますが、延長二千メートル、面積としては五十ヘクタールを超えております。このように車両基地は広大で、直線的な敷地を必要といたしますので、配置場所の選択に当たりましては、制約もございます。
しかしながら、議員お述べのとおり、車両基地は車両の検査や整備などを行う場所でございますので、関連企業の立地や就業機会の拡大など、地域経済や地域の皆様の暮らしに大きな経済波及効果が期待できますし、さまざまな発展可能性も有しているものと考えております。このため、今後の奈良県の要望活動に当たりましては、議員からご提案いただいた車両基地の誘致につきまして、新たな要望項目として加えることを検討してまいりたいと思います。
リニア中央新幹線の整備につきまして、早期前倒し整備につきまして特定目的会社というものを立ち上げてはどうかというご意見についての所感、ご質問でございます。
リニア中央新幹線の営業主体及び建設主体は、全国新幹線鉄道整備法に基づきまして、国土交通大臣が指名することとされております。東京・大阪間につきましては、平成二十三年五月にJR東海が国土交通大臣から指名されております。
また、全国新幹線鉄道整備法においては、営業主体または建設主体として指名しようとする法人は、その営業または建設をみずから的確に遂行するに足る能力を有すると認められるものではならないと定められており、JR東海の指名に当たっては、東海道新幹線の営業や建設といったこれまでの経験や実績が評価・考慮されたものと考えられます。このため、新しく特定目的会社を設立してリニア中央新幹線の名古屋以西の建設に当たらせるアイデアにつきましては、一部の団体からそのような提案があることは承知しておりますが、仮に必要な資金を集められたとしても、建設をみずから的確に遂行するに足る能力を有すると認めていただけるかどうかにつきまして、そのような判断をされるのは国土交通大臣の判断でございますし、そのような判断がされるかどうか確信が得られないという課題が残るのではないかと思われます。
JR東海に刺激を感じていただくという意味では大変に魅力のあるアイデアではございますが、実現可能性の観点からは、慎重に考える必要があるのではないかと思っております。
次のご質問は、お地元の近鉄郡山駅周辺地区のまちづくりについてのご質問でございます。
近鉄大和郡山駅周辺地区のまちづくりにつきましては、県と市の包括協定締結後、基本構想策定に向けまして大和郡山市と協議・連携し、検討を重ねてきております。現在は、地区の課題の整理、まちづくりの方向性などの議論をしております。また、十月からは地元の意見もお聞きする予定でございます。
議員ご指摘のとおり、近鉄郡山駅周辺におきましては課題が多いわけでございます。狭隘な道路や踏切、未整備の駅前広場、町なかのにぎわいの低下など課題が山積している地区でございます。これらの打開策としては、相当大胆な発想が必要ではないかと考えております。昨年六月の県議会で、駅のホームを北側へ移設することを前提に、市街地の再整備を検討してもいいのではないかという私見を含めた答弁をさせていただきましたが、近鉄郡山駅はまちづくりの核になる施設という認識からでございます。
駅の移設につきましては、私みずから近鉄に対しまして強く協力を求めました。近鉄からは、県・市と協働して検討を進めるということにつきまして、また、整備費用につきましては国費を除く費用を三者、県・市・近鉄と三者等分で負担することにつきまして、前向きなご回答をいただくなど、駅周辺まちづくりにつきまして非常に協力的な姿勢をお示しになったと認識をしております。
移設した駅を中心としたまちの将来像につきましてでございますが、例えば駅を橋上駅とした上での駅の改札口から駅東のバスターミナルや市役所、駅西の病院、駅南の既存市街商店街が連なる矢田町通り、駅北の郡山城址など、東西南北へ容易に直接行き来できる自由通路を設置することがまず第一点でございます。また、駅へのアクセスにつきましては、自家用車やタクシーのための駅前広場と、そこへつながり、鉄道線路をまたぐ高架道路を整備し、現在のホームの北に設置されている踏切を歩行者と自転車専用通路とすることなど、また、矢田町通りは都市計画で想定されている計画幅員二十メートルの拡幅とはせずに、道幅は現在のままにして、無電柱化をして歩きやすく、城下町にふさわしい歩行中心の町並みを形成し、価値を高めることなどのアイデアを考えられるところでございます。
また、議員お述べの市庁舎の整備につきましては、県として強く言える立場ではございませんが、移転新設も視野に、豊島区のように民間資金を活用した整備手法は検討に値するものと思われます。
このように、近鉄郡山駅周辺地区のまちづくりにつきましては、県としてのアイデアを積極的に市に提案しつつ、市と協働・連携し、魅力あるまちづくりの実現に向け、取り組んでいきたいと考えております。
次のご質問は、地域医療構想の策定をどのように進めていくかというご質問でございます。
人口が減少に転じる一方で、高齢者は増加すると見込まれておりますが、高齢者は慢性的な疾患や複数の疾病を抱える方が多く、従来の疾病構造が変化する中、これに対応できる医療提供体制の構築が必要でございます。
このような状況の中、政府の医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会というものがございまして、その中で病院完結型の医療から地域全体で治し、支える地域完結型の医療と介護への転換を推進することにより、二〇二五年の必要病床数を現在より全国で十六万床から二十万床、または奈良県におきましては千二百床程度の削減ができるとの推計が公表されました。
本県では、病床数だけにとらわれることなく、患者の状態に即した適切な医療を適切な場所で受けられるように、限られた医療資源を効率的に活用することが必要だと思います。切れ目のない医療・介護を提供するシステムづくりが重要だと思います。
そのため、質と量の両面におきまして、需要と供給をマッチングする仕組みを検討することにして、がん・脳卒中・心筋梗塞や救急・周産期・小児科など、これまで問題となっております医療連携体制の活用を含めまして、医療機関の機能分化と連携をより一層推進することにより、地域にふさわしい地域医療構想となるよう取り組んでいきたいと考えております。
また、地域医療構想における医療提供体制の構築は、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の一環でございます。医療費適正化計画の見直しや国民健康保険の県営化と一体的に取り組む必要がある課題であると思います。
さらに、高齢者の医療需要に応じまして、できる限り住みなれた地域で安心して生活を継続していただくために、在宅医療などの整備が必要でございますが、それに加えまして、介護と連携した地域包括ケアシステムの構築を進める必要がございます。このため、介護保険制度を運営する市町村と十分に連携を図ってまいりたいと考えております。
次のご質問は、林業や森林管理をどのように進めていくのかという質問でございます。
議員お述べになりましたように、本県はことし四月十七日にスイス・ベルン州と友好提携協定を締結いたしました。環境とエネルギー、林業、研究と教育、観光と文化などの分野で交流をしようとする協定でございます。
スイスにおける林業は、災害を契機に、モミやトウヒの単一樹種の林業から、自然の力を最大限に利用し、多様な樹種で構成される災害に強く、経済的にも成立する森づくりに転換をされました。合理的な森林管理を行っておられると聞いております。
社会条件におきましては、スイスは人件費が高く、所有者も細分化されており、また、山も森林も急峻であるようでございます。また、林業の経営方針も吉野林業と同じく、高付加価値の木材生産を進めているなど、環境は本県とよく似ておるように思います。そのようなことからも、本県とスイス・ベルン州との交流におきましては、技術・人材育成・組織などについて、本県と何がどう違うのか深く研究し、ベルン州のすぐれたところは全面的に受け入れる方向で検討を進めております。
今年度は、議員お述べのとおり、六月にはスイスからフォレスターと呼ばれる森林管理の専門家の方をお招きいたしまして、県職員及び林業関係者を対象に森林管理の考え方について学ぶ機会を持ちました。また、ベルン州の森林管理者養成校の校長をお招きして、県内の林業家と意見交換を行うことも予定をしております。
取り組み始めて間もないところではございますが、先ほど安井議員のご質問にもお答えいたしましたように、引き続きベルン州との交流の中から得られたものを、本県に合うような形で具体化もしくは制度化し、実践してまいりたいと考えております。
残余の質問は、警察本部長、教育長にご答弁をさせていただきます。ご質問ありがとうございました。
○議長(中村昭) 羽室警察本部長。
○警察本部長(羽室英太郎)(登壇) 三十九番小泉議員のご質問にお答えいたします。
私には、子どもの安全・安心の確保関する警察の考えや取り組み、また、地域や自治体が行う防犯活動に対する支援についてのお尋ねでありますが、香芝市において小学生女児が連れ去られ監禁された事件や大阪・寝屋川市の中学生が殺害された事件のような子どもが被害者となる犯罪の発生を未然に防止するためには、議員ご指摘のとおり、地域社会が一丸となった各種対策を推進することが重要であると考えます。
また、防犯カメラにつきましても、犯罪の予防、事件の速やかな解決など、安全・安心なまちづくりを推進する上で有効な手段であることから、今回の九月補正予算案におきまして費用を計上しているところであります。今後も、市町村や関係機関等を含め、設置を働きかけてまいりたいと考えております。
取り組み状況につきましては、県警察では、メロディーパトロールや夜間の少年補導をはじめとする街頭活動を強化するとともに、犯罪の発生状況や不審者情報等を県警ホームページやフェイスブックに掲載するとともに、約一万人の方が登録されているナポくんメール等を活用して配信し、被害防止対策に役立つ情報をタイムリーに提供するように努めております。
また、子どもに対しましては、学校等と連携し、連れ去り防止の合い言葉であります「いかのおすし一人前」を浸透させて危険を回避させる能力を身につけさせるための被害防止教室を継続的に実施しているところであります。
一方、県内における地域自主防災ボランティア団体は現在七百四十四団体、参加者約三万人に上り、また、市町村や関係機関等のご協力を得つつ結成されました青色防犯パトロール団体も二百二十二団体を数え、子どもの見守りや声かけ運動に取り組んでいただいておるところであります。
県警察では、こうした団体の方々に対し、安全を確保した効果的な防犯活動等に関する講習を行うなどの支援と連携に努めているところであります。
今後とも地域住民、防犯ボランティア、学校・自治体等など関係機関・団体との連携を強化し、子どもの安全対策を推進してまいります。
以上です。ありがとうございました。
○議長(中村昭) 吉田教育長。
○教育長(吉田育弘)(登壇) 三十九番小泉議員のご質問にお答えをいたします。
私には、子どもが事件や事故に巻き込まれないための指導や保護者への啓発などについて、学校でどのような取り組みをしているのかとのお尋ねでございます。
子どもを事故や犯罪等の被害から守り、子どもの健やかな成長を支えるため、学校は家庭、地域との連携によって、安全体制を整備することが大切であると考えています。県教育委員会では毎年五月に、学校・幼稚園、市町村教育委員会や警察の児童生徒の安全担当者による連絡会議を開催し、学校の安全計画を点検するなど、より一層強固な安全管理体制の構築を図っております。
各学校の具体的な取り組みといたしましては、登下校時の安全確保のため、地域ボランティア等の連携による見守り活動のほか、多くの学校では、警察や地区防犯協議会などの協力を得て、防犯教室を開催いたしております。今年度は特に、通学路や地域の危険な場所を、子ども自身も調査をし、地図に書き込むことで、犯罪被害や交通事故等を回避する能力を養う安全マップの作成に力を注いでいただいております。
また、夏休みなど長期休業期間に入る前には、保護者との懇談会等を通して、学校通信や児童生徒心得などを配布し、長期休業中の生活全般にわたり、子どもへの指導や保護者への啓発を図っております。特に、思春期に入る子どもの子育てに不安を感じる保護者のために、県教育委員会が作成をいたしました「親学サポートブック」(思春期編)でございますけれども、これをウェブページに公開しており、今年度中には電子書籍のように見やすく保護者へ配信できるよう計画をしております。
今後も、学校、家庭、地域が連携を深め、子どもを見守る体制づくり、学校での安全教育の徹底や家庭教育の支援の、さらなる充実に取り組み、本県の子どもの健やかな成長を支えてまいります。
どうもありがとうございました。
○議長(中村昭) 三十九番小泉米造議員。
○三十九番(小泉米造) それぞれ知事はじめ、警察本部長、さらにまた教育長、ご答弁ありがとうございました。
非常に、いろいろとご答弁の中で積極的にいい答弁をしていただいたと私は思っております。
しかし、若干さらにお尋ねしたいこともあるわけでございますけども、一つだけ知事に聞いておきたいやつがございます。
郡山のまちづくりの話でございますけれども、実は包括協定が結ばれております。それに基づいてやっていただいているんですけれども、今積極的に近鉄との話もうまくいっているような話がございましたし、このようにしたらどうかという知事の思いがございました。非常に、私自身はうれしく思っているわけでございますけれども、次には、包括協定の次は基本協定を結ぶんですね。基本協定は、大体いつ、どのぐらいの、いつごろぐらい、めどに協定を結んでいかれようとしているのかというとこら辺についての、大体の知事のスケジュール的な内容がわかれば、ひとつお教え願いたいと思っている次第でございます。
それから、これは私の要望ですけれども、リニア中央新幹線の基地の問題が、車両基地の話がございましたけれども、この話の中で、積極的に要望を取り組んでいこうというふうになりましたけれども、例えば郡山にリニア中央新幹線の駅が、JR東海が決めた場合、私は車両基地は郡山の東側か天理か奈良の東部の南側かというとこら辺に設置ができるんではないかなと思っておりますので、そういうことをあわせて、少し私の私見を述べておきたいと思います。それだけ、一つだけお尋ねしておきますんでよろしくお願いします。
○議長(中村昭) 荒井知事。
○知事(荒井正吾) 近鉄郡山駅の包括協定で検討を始めたわけでございます。
今、申し上げましたように意見交換は具体的な内容について、ああかこうかということに話が進んでおります。ホームを北に移すということについては、基本的にその方向でご異議はないように感じております。その上で、橋上駅をどのようにするか、駅周辺の整備をどのようにするかというのは、これからの課題でございます。駅の整備を移すことについて、先ほど申し上げましたように近鉄自身も前向きな、協力的な姿勢でございます。
郡山の包括協定の中の要素は、近鉄駅前周辺の地区の整備と矢田町通り、これは県道でございますが整備をする。これは県がみずから行うことになる。それと、JR郡山駅との間を結ぶバスをどのように、移動手段をどのようにするかといったことなど、大きく分けて三つの要素がございます。それぞれ個別協定的になるわけでございますが、基本協定になりますと三つをあわせて基本協定にしようかというようなタイプもあるわけでございますが、駅周辺だけを基本協定にするということで、かつ個別協定、駅の広場をどうするか、橋上駅をどうするか、市役所の整備をどうするかといったような、その中でも個別協定が発生する可能性があるわけでございます。そのようなことからいたしますと、駅周辺、最も大事な駅周辺の内容につきまして、基本的な骨格が出た場合、駅の出口はどうするのか、どのようなところに橋上駅のラッチというか改札口を置くのかなどの具体的な中身が確認できたら、このようなことでいいというふうに確認ができたら、それは駅周辺の包括協定ということが実現可能になろうかと思いますが、その際は近鉄も入った三者の包括協定ということになるんじゃないかと想定をしております。
そういたしますと、段取りというのはまだいつどうかというふうには頭にないわけでございますが、具体的な絵ができてくると、包括協定も間近に迫ってくると思いますが、今平面図をもとに検討をしておりますが、もう少し立体的な図などが出てまいりますと、一挙に市民の方にも提示ができて、イメージが湧き上がってくると思います。そのようなことから、具体的な絵と平面図とパースを出すのが、その次のステップでございますが、今年度中、ことし中というのはちょっと難しいかなと思いますが、次の来年の早期には、そのような絵ができますと、そのような絵が眼前にありますと、じゃ、どのようにしようかということに、合意は成立する可能性があると、そのような段取りで考えております。いつまでという時間的なことはなかなかはかり知れないものでございますが、一つ一つ次のステップが目に見えてきているといったような感じをしております。そのようなことをご報告申し上げたいと思います。
以上でございます。
○議長(中村昭) 三十九番小泉米造議員。
○三十九番(小泉米造) わかりました。できるだけ市民の理解も得ながら、いい駅前含めて、郡山のまちづくりができるように、ひとつよろしくお願いしておきます。
ありがとうございました。終わります。